イチ*コイ
専門学校に行く予定っては聞いたけど、県内かも知らねぇし。
受かってはいるだろう。
「なあ…美華?」
「うん?なあに?」
どくりどくりと心臓が鳴る。
なんだこの感じ…。
ただの気のせい、そうだろ?
「お前…どこの専門学校行くの?」
言ってから、空気が変わった気がした。
ゆっくりと美華が立ち上がって、海に向かう。
「美華!…答えろよ」
「…東京の、専門学校」
「は!?お前…何でわざわざ県外行くんだよ!?
ここら辺にだってあるだろ!?」
「そうだけど…でも、どうしても行きたいの」
美華の真っ直ぐな目を見れなかった。
ずっとくすぶってた“何か”は…これだったのかよ。
もっと早く、知っておけば…心の準備が出来たのに。
ここだって一応関東だし、一生会えない訳じゃない。
けど離れてしまえば、もう美華はどこかに行ってしまう気がした。
今更美華を離せるか?
…むり、だろ……。
近くにいたって、不安になるのに。
「ごめんね…でも、決めたことだから」