イチ*コイ
自然と視線が落ちていく。
お前に俺は必要ないのか?
なんて…聞けねぇよ。
「だから…っ、別れよう?」
「は…っ、嫌だっ!!
遠恋だって大丈夫だろ!?」
「無理だよ…ごめん、ごめんね…っ?」
顔を見れば、大きな目から涙が溢れていた。
そのまま…海にとける。
悲しくて、切ないのに…目が離せなかった。
「立ち止まらないで…振り返らないで…」
「…っ!」
それは…乃亜が、俺に言った言葉だった。
…さすが双子、か?
なんて自嘲した。
「あたしのことは忘れて…?」
泣きながら君が笑った。
砂浜に書いた2人の名前は
静かに波にさらわれた。
あの日と同じように…。
「…ばいばい」
言葉も、俺を置いていくお前も…
何も言えない、俺も。
好きだ、愛してる、離れたくない…
伝えたいことはたくさんあるのに
何も口から出てこなかった――。
いつだって俺は、お前の考えてることがわからなかった。
お前はふわふわしてるから。