イチ*コイ



 廉をほっぽって美華に近づく。

 足音で気が付いたのか、振り返る美華。


「え…何で大森くんが…?」


 目を丸める美華を無視した。


「お前…嬉しくねーの?」

「え…??」

「お前は今、モテてんだぞ?
 今までじゃ出来なかったことが出来てんだ。
 なのに何で嬉しくねーんだよ?」

「……」


 理解できない…。

 せっかく俺が、変えてやったのに。

 俺の人脈を使って最高の美容院や最高のエステが出来たのに。


「せっかく変われたのに何で楽しまねぇんだよ!?」


 気付いたら美華を、壁に追い詰めていた。


「…っ!」

「もっと俺を楽しませろよ?
 その為にお前を変えたんだから…!」

「斗真…!」


 廉が俺を抑える。

 こんな奴、すぐに振りほどける。

 実際、廉はすぐに地面に座り込んだ。


「大丈夫、だから…櫻沢くん」

「え…でも、」

「大丈夫…」


 俺を無視して話す2人。

 今、お前が喋ってんのは、俺だろ?

 ――俺を見ろよ…。


「大森くん…」

「…何だよ」


 やっと俺を見た目に、少しイライラが収まる。



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