イチ*コイ



「多くの人に好かれるって…そんなにいいことかな」

「…は?」


 何言ってんのこいつ。

 人生でどれだけモテるか、それが存在意義だろ?


「確かに、嫌われるよりは好かれるほうがいいと思うよ。
 でもね、私はそこまで魅力的だとは思わないよ」


 いつもはビクついて、真っ直ぐ俺を見ようとしないくせに

 真っ直ぐ、自分の意志と目を、向けてくるから。

 俺はその目から、目が離せなくなった。


「私は、多くの人に好かれるより…たった1人の、自分が好きな人だけに、いっぱいいっぱい好きになってもらいたいって思うよ」


 たった1人だけ…?

 そんなの、つまんねーだろ。

 いろんな奴に好かれていろんな奴と付き合って

 そんなゲーム感覚がいいんだろ。

 なのに何でこいつは、美華は…ちげぇの?


「そんなのじゃ、誰からも本気で愛されないよ。
 本気の気持ちに応えられるのは、本気の気持ちだけなんだよ…?」

「…ンなのどーでもいい」


 それは美華の持論だ。

 俺が合わせる義理は、ねぇ。


「大森くん…!」



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