イチ*コイ
音楽が止まっていた。
白い採光は変わり、オレンジ色の光が射し込む。
「乃亜…?」
名前を呼んでもいつもの声がしない。
ケータイで確認すると時刻は5時35分。
そして受信メール1件。
20XX/04/17 17:03
From:乃亜
Sub :No title
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起こしても起きない
カラ置いて行きまーす♪
---end---
「ちっ…あの女」
起きなきゃ起こしたとは言わねぇんだよ。
はぁ、……冷めた。
あと1回がラストチャンスだな。
そしたら別れよ。
出入り口に行こうとすると…1人の女がいた。
窓際の1番奥の座席。
――そこにあいつが、いた。
その女は分厚い本を読んでいた。
「…オイ、もう5時半すぎてるぜ?」
「…」
無視か、こいつ…ッ!
「オイッ!!」
近付いていって、俺を見るように肩を掴んでこちらを向かせた。
「――ッ!?」
「――ッ、え…!?」
泣いて、る…!?
急いで肩から手を離す。
「わ、わり…そんなに痛かったか?」
「え、いや…あの」
黒縁メガネに丸い顔。
こいつ、どこかで…あぁ、俺の隣の席の奴だ。