イチ*コイ
飴を受けとるときに少し触れた指先。
暖かくて、柔らかかった…。
礼を言おうと口を開けたとき、鼻に雫が落ちた。
「え、雨…!?」
眺めている間に雨は本降りになった。
「大森くん、木の下に行こ…っ」
「あぁ…」
立ち上がった途端に、足首が悲鳴を上げた。
「っつ…」
やべ、よろける…。
転けるのを覚悟した、けれど身体は倒れなかった。
「大丈夫?もうちょっとだからね…っ!」
俺の身体を支える美華の小さな身体。
大して役に立ってねぇし…。
こいつ、小さすぎなんだよな…。
けどそんな“美華らしさ”に、また笑いが零れた。
俺の笑い声が聞こえるくせにスルーするから。
ちょっと屈んで美華の顔を見た。
「――っ」
その顔は意外なくらい真剣で
目が離せなくなった。
「ここなら大丈夫かな…」
そう言って大きな木の下に座る。
痛みが走らないようにか、ゆっくりと…。