イチ*コイ



 少し顔を動かせば耳まで真っ赤になってるのがわかった。

 くっ…ほんっと免疫ねぇな。


「斗真って呼んだら離れてやるよ」

「なっ…む、むりだよ…っ」


 力一杯目を瞑る美華。

 ほんとからかいがいある。


「呼べよ…美華」


 形のいい耳に囁く。

 出来るだけ甘く、優しい声で。


「……、…とぅ…ま…くん」

「…くんとかいらねぇんだけど」


 あー興醒め。

 未だに茹で蛸状態の美華を見た。

 ま、十分楽しめたけど。


「これからはそう呼べよ」

「えっ!?」

「呼ばないと〜…そうだな。
 罰ゲームするかんな」


 これでもっと楽しめる。

 固まる美華を見て、口角を上げた。







 だってよ、ずっと気になってたんだ。

 他の女は言わなくても勝手に呼び捨てなのに、

 こんなに近くにいる美華はずっと苗字呼び。

 いい加減作り笑いも愛想笑いもやめてほしいんだよ。

 俺だけマジみてぇでダセぇだろ。

 俺だって他人に壁作ってんのにさ。

 いい加減、心開いてほしいんだって――…







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