イチ*コイ
それから数時間、美華をからかい続けた。
やっぱこいつは他の女と違う。
譲れない『自分』を持ってる。
んで…線を引いてる。
一定距離から近づこうとしないし、近づかせない。
はっきりと感じないほどの拒絶。
何となく、よそよそしい感じ。
――俺がその壁、取っ払ってやる。
見た目だけじゃねぇ。
中身も変えてやる。
この気持ちに名前はつけらんねぇ。
けどこいつだけは特別なんだ。
自分第一の俺が、庇うなんて
姉貴が聞いたら病院に連れ込まれる。
そして俺たちは無事捜索隊に見つかり、俺は病院へ。
勿論、足な。
車に揺られている中、美華の横顔を思い出した。
周りの声が聞こえないくらい、真剣だった。
何で俺なんかのためにそこまで真剣になるんだか…。
思えばそうだ。
あのとき――落ちるとき、よく手出せたよな。
あーゆーとき、実は反応できないもんだ。