イチ*コイ
―なんちゃってデートの行方
…変だ、絶対俺は変だ。
あのときの美華の横顔が頭から離れねぇ。
惚れた?…ンなわけあるかばーか。
相手はあの美華だぜ?ありえねーよ。
「とーま!何考えてんだよ?」
「…は、何?」
「いや、何考えてんだよっつったんだけど」
呆れたような廉に、ため息を贈る。
珍しく俺が考え事してんだからそっとしとけって…。
どこかニヤニヤ笑う廉を放って、またため息を吐いた。
俺には一応、乃亜っつーカワイイ彼女がいるんだ。
…こないだはあんなことになったけど。
あれからは普通だし。
美華を気にすることなんて、ねぇのに。
「お、次乃亜ちゃんだぜ?」
「ん?あぁ…」
そう言って、フェンス越しに乃亜を見た。
今は地区大会の真っ最中。
近場ってことで、乃亜のいる女テニを見に来た。
サンバイザーの下から覗く大きな目は
今は凛々しく輝いていた。
俺に気付いたのか、少し笑う乃亜。
それに右手を上げて応えた。