イチ*コイ



 こうでもしなきゃわかんねぇだろ。

 やっぱり男は不服そうにして去っていった。


「な、何するのっ?」

「名前で呼べっつったろ。
 呼ばなかったから罰ゲーム」

「なっ…も、もー…!」


 真っ赤になる美華。

 俺はそれを見て、クスクス笑った。

 やっぱこいつ、飽きねぇな。

 そんなことを、思いながら。


「…もう、帰るの?」

「あー…そうすっかな」

「そっか、じゃあばいばい」


 そのまま帰ろうとする美華を慌てて引き留める。

 こいつバカだろ…っ!!

 不思議そうに見上げるバカは、何にもわかっちゃいない。

 ほんと鈍感っつーか何つーか…。


「一緒に帰ればいいだろ」

「…へ?誰が?」

「お前が」

「誰と?」

「俺と」


 ………オーイ、頭大丈夫かぁ?

 ショートした美華の前で手を振る。

 10秒くらいたってから戻ってきた美華は


「何で?」


 と、のたまった。

 …もうこいつ、どうすればいいわけ。



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