イチ*コイ



 ブツブツいうヤツのデコにデコピン。


「いたぁ!」

「決定っつったろ。早く行くぞ」


 歩くのが遅い美華の手首を掴んだ。

 このペースじゃすぐ昼になっちまう。

 歩幅が違うのか小走りになった足音。

 その音に、また笑った。






 何でだろな…美華といると、楽なんだ。

 ムリに笑わなくていい

 ムリに喋らなくていい

 …そーゆーこと、なのか。


「あぅ…っ」

「またかよ、お前ヘタスギ」

「だ、だって…!はぁ…」


 ため息を吐く美華は、目の前の画面を睨む。

 リズムに合わせて太鼓を叩く、あのゲームだ。

 今んとこ4戦中俺が4勝。

 つか美華はノルマ自体クリアしてねぇし。

 女でこんなにリズム感ない奴、初めて見た。


「飽きてきたしやめるか」

「ほんと!?よかったぁ…」


 ぽつりと呟けば、笑顔で返してくる。

 …そんなに嫌だったのか。

 まぁ確かに、リズム感なさすぎて逆に人集まってきてるしな。



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