イチ*コイ
荷物を取って、奥に進む。
ふと、喋らない美華を見ればクレーンゲームを見ていた。
今まで見たことない、ツギハギのウサギのキャラクター。
ぶっちゃけ可愛くねぇし。
「…ほしいのか?」
「え!?ち、違うよ!…ただ、」
「ただ何だよ?」
目を逸らされて、俺は映らない。
口をパクパクさせて、でも言わない態度。
こーゆー、曖昧なとこがキライなんだよ。
「ま、どーでもいいけど?」
「…うん」
なのに何で、ンな辛そうな顔すんだよ…。
俺にも良心なんてモンがあったのか、胸の奥がツキンと鳴った。
そのクレーンゲームに近付いて財布から小銭を出して入れた。
「え、え…??」
「ほしいんならほしいって言えよ。
言わなきゃわかんねぇだろ」
「……」
うし、ンじゃ久々にやるし集中するか…。
「――…あの、ムリしなくても…」
「うるせぇ、黙ってろ」
小銭を入れること数十回。
例のブサウサは少し近づいてきたくらいだった。