イチ*コイ
―Annoying Summer
―ジー…ジー…
ガラス越しにセミの鳴き声が響く。
「あー…だる…」
冷房に包まれた部屋で、ベッドに寝っ転がる。
枕から自分のじゃない匂いがして、思わず眉間に皺を寄せた。
「おい、消臭スプレーどこだよ」
「俺の枕そんなに臭いかっ!?」
「だから言ってんだろ」
半べそかいてる廉から受け取って2、3回プッシュ。
それからそれをサイドテーブルにのせて、枕に突っ伏す。
うん、無臭。
何で俺が廉のベッドに寝ているかと言うと、答えは簡単。
世の中はもう、夏休みだ。
家で昼まで寝ようものなら姉貴にパシられるのがオチ。
だから俺はいつも、長期休暇は廉の家に住み着いていた。
廉の家族も何も言わねぇし (むしろ喜んでる)それが当たり前だった。
そこからバイトに行ったり、遊びに行ったりする。
周りは面接練習やら何やらで忙しそうだったが、俺には関係ねぇ。
試験まではまだ時間もあるし、余裕だった。
「斗真ー、俺バイト行ってくるけど、お前どうする?」