イチ*コイ
「何…で…。
あたしじゃだめなの?
もう好きじゃないの?」
いつも気丈に笑ってた乃亜。
そんな乃亜が震えていた。
よたよたとこっちに歩いてくる。
「2度と逢えないの?
何も言わないの?」
涙を堪えながら俺を見上げた。
この間みたいな苛立ちからじゃない。
冷静な俺の声に、本気だと感じたんだろう。
「どこも行かないで…、ひとりにしないで…っ」
しがみついて乃亜が泣いた。
胸の辺りが濡れていく。
その姿に何だか胸の奥が痛くて
乃亜を見れなくて
息も出来なくて…
それ以上、“ダレカ”に泣いて欲しくなくて、
初めて悲しいキスをした。
乃亜は、他の女とは違って
男慣れしてるっぽいのに実はキスしただけで照れて
その照れ笑いが可愛くて付き合うことにしたんだ。