イチ*コイ







 誰かを傷付けずに別れる方法なんてない。

 それでも乃亜は今までの女とどこか違ったから。

 簡単に切り捨てられないのかもしれない。

 ――でも俺は大森 斗真だから。

 他人なんてどーでもいい。

 1、2回頭を撫でて放す。


「斗真…諦めがつくまで、好きでいていい…?」

「…好きにすれば?」


 俺はもう、気持ちには応えてやれない。

 めんどくせーから相手もしねぇし。

 …廉に何か言われそうだけどな。


「じゃあ帰るか」

「斗真は先に帰って?」

「は?でも…」

「いいから!帰って…?」


 …気まずいっつーことか。

 女1人で帰らせんなって言われるけど…しゃーねーな。


「気を付けて帰れよ」

「うん…」


 少し歩いて…足を止めた。

 本当にこのままでいいのか?

 犯罪とか巻き込まれたらどうする?



< 68 / 238 >

この作品をシェア

pagetop