イチ*コイ
「立ち止まらないでっ!
…振り返らないで…」
少し迷ったが…足を進めた。
いつもみたいに、適当に手を振る。
見てるかわかんねぇけど。
こうして俺と乃亜の関係は終わった。
帰りの電車の中、ぼーっと広告を見た。
【これでうざったい夏もスッキリ爽快!!】
そんな煽り文のシャンプーのポスター。
うざったい夏…Annoying Summer、か。
「あれ…斗真くん?」
「!…美華?」
聞き慣れた声に顔を上げれば、両手に袋を持った美華がいた。
周りを見ても誰もいねぇから…1人か?
まあ…別にもう、誰に見られてもいいんだけど。
「何やってるの?」
「別に…お前は?」
「あたしは…夕食の買い物。
特売だったから、ついいっぱい買っちゃって」
「フンッ…主婦かよ」
俺の前に立つ美華を退かせて、さっきまで座ってた場所に座らせる。
ついでに2つ、買い物袋を持つ。
おっも…まじでコイツ主婦じゃねぇの?