イチ*コイ
「え、あ…悪いからいいよ!」
「うるせぇ。
大体お前、つり革届くのかよ」
「届くよ!失礼だなぁ…」
頬を膨らませる美華を鼻で笑った。
届いてもどうせギリギリだろうよ。
それはそれで見ててウケるだろうけど。
「でも…ありがとう」
そう言って頬を染めて笑う。
礼言われる筋合いねぇけど、まあいいか。
勝手に言わせとけば…。
「斗真くん、どうかしたの?」
「何が?」
「何か…疲れてる…?」
…何でこういうときだけ鋭いんだ。
いっつも、うぜぇくらい鈍感なのに。
「別に何もねぇよ」
「そっか…言いたくなったら言ってね?」
ふわりと笑った顔が何故か乃亜と被った。
乃亜…泣いてねぇといいんだけど。
女泣かしたら殴られる…。
誰にって、そりゃあ姉貴に。
アイツは女の味方だから。
「…Annoying Summer…」
「え?…うざったい、夏?」
ちゃっかり独り言聞いてやがる。