イチ*コイ
―動き始める歯車
ぼろぼろに泣き崩れた姿は
見ているだけで痛々しくて
小学生だった俺の脳にも焼き付いた。
アイツは嬉し泣きって言ったけど、本当はそうじゃないってことを俺は知ってる。
見た目でしか判断しない、世界を恨んだんだ。
中身なんて見ない、知ろうとしない人間に絶望したんだ。
「――…じゃあ居眠りしてる大森はこれな!」
「……は?」
突然聞こえた自分の名前に、閉じていた目を開けた。
真っ直ぐ黒板を見るとその前に立つバーコードハゲの担任が見えた。
……おい、邪魔だよハゲ。
そんな俺の思いが伝わったのか、少し横に寄ってやっと文字が見えた。
そう言やぁ、今体育祭の種目決めてたんだっけか。
うちの学校の体育祭は9月の3週目の日曜。
だから今日はロング使って決めてたんだった。
さっき言われたから、俺の名前もどっかにあるはず。
そう考えて視線を滑らせて行くと――…
――1番嫌なとこに、あった。
「大森のパートナーも決めないとなー」
「センセー、まだ決まってない奴から決めればー?」
「えー、アタシ立候補?するし!」
「アタシもー!」