イチ*コイ
「外側からだ、行くぞっ」
「うん!せーのっ」
「いっちに、いっちに」
美華の歩幅を気にしながらスピードを上げていく。
抜かされて今、4位だし。
脚の長さちげぅし、タイミング合わねぇと思ってたけど…案外合う。
ふわりと、ツインテールにした美華の髪が揺れる。
あんなに短かったのに、もうツインテールにしても肩より下まである。
何か…気持ちいい。
こんな感情、初めてだ…。
―――――
それから俺たちは1位になり、総合優勝した。
俺にとって、美華はどこか違うと知った。
一緒に居てもうざくねぇ…。
むしろ、心地よくて。
理解できねぇけど、そんな俺も悪くねぇかな…なんて思った。
うわ、気持ちわるー。
紙パックのコーヒーを啜りながら空を眺めた。
俺は今、避難のためにここ、中庭にいる。
何から逃げてるかっつーと…
「斗真!見つけた…!」
いつまでも諦めない元カノ。
今はもう、柔らかい栗色の長い髪も、笑顔も…嫌悪の対象でしかなかった。