イチ*コイ



「お前にキョーミが湧いたから」


 判断基準は、俺が『楽しい』か『楽しくない』かだ。

 こんな気持ちは、めんどくささにも勝る。


「モテたほうが人生楽しいぜ?」


 そう言った瞬間、本鈴が鳴った。

 何だ、案外今日は早かったんだな。


「…そんなの」

「お前に拒否権はねぇから」

「え!?」


 こいつ相手だったら、素出せるんだ。

 何かわかんねぇけど。


「よろしくな?美華」

「…は?」


 口を開けて俺を見る美華。

 うわ、こんな顔初めて見た。

 女でもこんな顔すんだな…。


「私、《ミカ》じゃないんだけど…」

「はぁ?九条 美華(クジョウ ミカ)…だろ?」

「いや…ミハナだけど。
 九条 美華(クジョウ ミハナ)」


 美華で《ミハナ》かよッ!!!!

 ずっと《ミカ》って思ってたし!!!!

 うわ、はず…!!


「…じゃあお前は俺の名前わかんのかよ?」

「大森 斗真(オオモリ トウマ)くんでしょ?」

「…ちっ」


 ちゃんと覚えてるし…。



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