イチ*コイ
「まだ好きなのに…、どうして…っ!」
そう言って泣き崩れる妹。
あたしは…何も言えなかった。
ただ、あたしより大きい身体を抱きしめることしか出来なかった。
「そばにいたいだけなのに……ッ!」
ゆっくりと、小さな頭を撫でた。
シャンプーの花の香りが匂ってくる。
サラサラの長い…栗色の髪。
「―――斗真ぁッ!!」
妹の…乃亜の幸せを奪ったのはあたしだ。
何より幸せを願っている乃亜の
幸せを奪ったのは…あたし。
喉の奥がツンとして、視界が滲む。
あたしが奪ったんだ…。
ごめん、その言葉も言えずに…
ただ抱きしめて、頭を撫で続けた。
安心して、乃亜…。
あたしのこの気持ちは誰にも伝えない。
あなたは幸せにならなくちゃいけないから。
例え自分を犠牲にしたって…それが当たり前だよ?
乃亜の幸せを守るよ。
あたしは乃亜のお姉ちゃんだから…。
乃亜の幸せを守らなきゃ。
可愛い可愛い乃亜
そんな乃亜が笑うだけで、周りは幸せになるから。
あなたの幸せを…願ってる。