イチ*コイ

―海にとけた涙




「わあ…っ、すごい…!」


 目をキラキラさせる美華。

 見た目からして、小学生にしか見えない。

 つーかこんなに喜ぶとは思ってなかったけど。

 9月23日は秋分の日、んでもって…俺の誕生日だ。

 気を遣ってダチが水族館のチケットをくれたから美華と来てみた。

 乃亜とは…来ようと思ってなかったし。

 それに美華のリアクションが1番ウケる。

 何でも可愛い可愛いって笑う。

 その姿を見てると、胸の奥がモヤモヤする。

 決して不快じゃない、モヤモヤだけど。

 笛に合わせて3匹のイルカが水の中から飛び出した。

 リズムを取りながら、楽しそうに。

 ちらっと横目で美華を見ると、楽しんでるみたいだった。

 ペンギンもホッキョクグマも、イワシもマグロも目を輝かせて見てた。

 水族館、好きなんだろうな…。


「今の見たっ!?」

「あぁ…」

「すごいなぁ…可愛いなぁ…っ」


 ガキに混じっても違和感ないくらいに楽しんでる美華。

 さっき聞いたけど、海の動物が好きらしい。



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