イチ*コイ



 気付いたけど気にしなかった。

 俺には関係ねぇと思ったから。

 エスカレーターに向かって歩く。

 この水中エスカレーターはすげぇと思う。

 下からも横からも見れるし、俺も気に入った。

 美華お気に入りの水中エスカレーターを通って、出入り口に向かう。

 10時から来たのに、もう16時38分…長っ。

 どんだけいたんだよ…。


「すっごく楽しかった!
 連れてきてくれてありがとうっ」

「…おう」

「あ、海だー!
 斗真くん、行こう?」


 テンション上がりっぱなしなのか、シャツの裾を掴んでくる。

 いつも消極的なのに…。

 ゆっくり後を追って、砂浜に出た。

 木の棒を持って何かを書いてるところを覗き込む。

 『みはな とう』と書いてるとこだった。

 恋人かっ!


「そう言えばテスト、大丈夫かなー」

「大丈夫だろ、楽だし」


 サラッと答える。

 つか学年で20位以内に入ってるくせに何言ってんだ…。


「え…斗真くんて、結構成績よかったんだ…」

「失礼なやつだな…俺はただめんどくさがりなだけで、やるときやるんだよ」



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