イチ*コイ



 何故か少し赤くなって俯く。

 まあ…これも慣れたけどな。

 決心がついたのか、上目遣いで俺を見る。


「…っ」

「雑誌の編集者に、なりたいなって思って」

「編集…?」

「うん」


 へー、そんな目標があったとは…。


「……斗真くんの、おかげだよ」

「は?俺?」

「うん」


 笑顔で見上げてくる美華。

 随分俺にも慣れてきたよな…。

 初めはビビってばっかだったのに。


「斗真くんがあたしを変えてくれたから…オシャレって楽しいって思えて。
 あたしみたいにまだよくわからない子たちに、教えてあげたいなって思うようになったの」


 風でなびく髪を押さえてふ、と笑う。

 それが何だかすげぇ絵になって、目が離せなかった。


「口で伝えるのは苦手だから、言葉で伝えたいの」


 海に向けていた視線を俺に向ける。

 真っ直ぐで、濁りがない瞳。

 この目だけは…いつまで経っても変わらないんだな。


「斗真くんのおかげだよ…ありがとう」


 そう言って、にっこり笑った。

 その笑顔を見て…俺は、


「……おう」


 それしか、言えなかったけど。



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