イチ*コイ



「それで…これなら、男の子でも大丈夫かなって思って。
 …誕生日、おめでとう。
 生まれてきてくれて、ありがとう」


 感謝の言葉と共に贈られたのはとても穏やかな笑顔だった。

 …こんなに穏やかな顔、生まれて初めて見た。

 生まれてきてくれて、ありがとうも

 初めて言われた。


「…おう。開けていいか?」

「もちろん」


 包装紙を破らないように取っていく。

 包装紙でさえ、破りたくなくなる。

 大事にとっておきたい。

 …俺、きもーい。


「っ…これ、」


 それはシルバーのプレートにイルカが彫られているストラップで

 何となく恥ずかしくって買えなかったヤツだった。


「気に入ってくれたら嬉しいんだけど」


 はにかんでから向こう側に歩いていく美華。

 やっべ…気付いたのは、今さっきだけど。

 何で俺気付かなかったんだ?

 ってくらい…美華が、好きだ。

 ちっちゃいカラダのくせに、誰よりも意志が強くって

 ――俺にはないモノを、感じたんだ。



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