イチ*コイ
「…斗真くん」
「ん?どうした??」
柔らかく笑い返す。
自分の気持ちに気が付いたから。
『誰かを愛すれば優しくなれる』
その格言が本当なんだと思った。
今までそんなの、信じてなかったけど。
「斗真くん…乃亜と付き合ってたんでしょ」
「…そうだけど」
何で今さらそんなこと?
それに今の俺たちには関係ねぇし。
「言わなくてもわかると思ったから言わなかったけど。
…あたし、乃亜の双子のお姉ちゃんなの」
「――!?……へぇ?」
驚きはしたけど戸惑う内容じゃあない。
そう言えば2人とも九条だな、って…その程度。
一瞬で平静を取り戻した。
微妙な距離に気が付いて、美華に近寄ろうと足の向きを変える。
「来ないでっ!!」
「…美華?」
涙で揺れる大きな瞳。
その瞳には戸惑う俺が映されていた。
拒絶される理由が、わからなかった。
拒絶なんて今まで1回もされたことがなかったから。
「…あたし、もう斗真くんとは関わらない」
「…何、言ってんだよ…?」
俺とは関わらない…?
なんで どうして?
数分前まで、笑い合っていたのに。