イチ*コイ
「自分がどれくらい最悪かなんてわかってる!」
「ならッ」
「でも、斗真が好きなの!
斗真じゃなきゃ…だめなの…ッ」
そう言って泣き崩れた乃亜。
だから美華は…俺から離れたのか?
…ンなの、納得できるかよ。
呆然とする俺を滲んだ目のまま見上げる。
「お姉ちゃんはもう、斗真には近付かないよ」
「…は?」
「お姉ちゃんはあたしの幸せを願ってる。
だからもう、斗真には近付かないよ」
……どういう、ことだ?
呆然と、不敵に笑う乃亜を見詰めた。
どうしてこいつは笑ってる?
「お姉ちゃんはあたしの幸せを願ってるの。
その為なら何だってしてくれる」
すっくと立ち上がって俺の頬に手を寄せる。
馴れ馴れしいその態度に眉間にシワが寄った。
「そうだね、うん…きっと、斗真がまたあたしと付き合ってくれたら前みたいになると思うよ?
そうしなかったらどうなるか…わかってるよね?」
「お前…美華のこと、利用したのか」
美華は純粋に、乃亜のことを思ってたのに。
……だから、俺から離れたのに。
涙が出そうになるのを抑えるために、ぎゅっと拳を作った。
乃亜はきょとんと目を丸くさせて…それから、笑い出した。