百地外伝~夢と希望


「あ、あの、あたし、泊りがけで一週間って、む、無理です!」


あたしは、急な話の展開に、頭も身体も付いていかない。

紫苑先輩とユタと小太郎先生と、たった四人だけの密な関係にどう対処していいのか分からない。


「あ、あたし、知らない人ばっかりで、ぜ、絶対、無理です!」


もう、涙さえ出てきてしまいそうな勢いで叫んだ。


「夢子ちゃん来ないと、合宿になんないよ。

三人しかいないん・だ・も・ん……」


紫苑先輩の声が次第にくぐもって、最後の方は聞き取れないほどテンションが低くなった。


「夢子、もしかして翔も来れば行く?」


えっ、と思いもかけない提案に、声の主を疑った。


何で、翔が出てくるのさ?


「ユタ、翔って誰?」


紫苑先輩の鋭い目つきがユタに注がれた。


「あ……、夢子の幼馴染みです。

いつも一緒だから、翔が来れば、夢子も来るかなって……」


「部外者だけど……、夢子が来るなら、許可する」


紫苑先輩はチラッと顔を小太郎先生の方へ向ける。


先生は優しく頷いて、了解を示した。


「へっ?」

「じゃ、僕、交渉してみますっ!」


ユタの顔はほんのり赤色に戻りつつあって、その高揚感に瞳が輝いていた。


あんたのその積極性は、自分のためでしょ?

憧れの小太郎先生に教えを請える、夢のような機会だものね。
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