百地外伝~夢と希望
紫苑先輩の別荘は、伊豆と言っても、正確には伊豆半島の付け根にある熱海にあるのだそうだ。
小太郎先生が仕事柄、締め切りに追われて篭る仕事場にも使われるので、東京からも便の良い熱海ということらしい。
「熱海って言うと、なんか俗っぽいでしょ?
だから、あたし的には伊豆」
紫苑先輩はちょっぴり不満そうに、口を尖らせた。
「でも、海を見下ろす山の上だから、静かだよ」
これから編集者との打ち合わせだという小太郎先生が退席されたあと、紫苑先輩とユタとあたしは、紫苑先輩の立てた一週間の合宿スケジュールの検討会を開いていた。
「夕方から夜にかけてが、やっぱ、執筆時間でしょ?」
「昼間は何するんですか?」
「昼間は構想を練るってか、まぁ、いろいろ。
折角だから海で遊んだり、散策したりさ」
「先輩!」
「だってさ、夏休みだし、合宿することに意味がある訳だしさ」