百地外伝~夢と希望
百地が挨拶しているのに気が付いた翔が、ユタ達の輪から離れて駆けてきた。
「ぼ、いや、わたしは藤林翔です。宜しくお願いします」
「百地に藤林……
伊賀の忍者の末裔かね、君達は」
「は?」
「いや、失敬。
わたしも作家の端くれでね、以前忍者について調べたことがあって、ちょっとその名に親しみがあったものだから。
たしか根来だったかな、その忍者の里を訪ねたこともある」
「根来に……」
「残念ながら、そこが忍者の里だと認識している人はもう残っていなくてね。
いくつか史跡を訪ねただけで終わってしまったが……」
「パパ、お昼のバーベキューに間に合わななっちゃう! そろそろ出発しましょ!」
紫苑先輩の明るいかけ声で、会話は中断された。
「そうだな、出発するとするか。安全運転で行くから、安心して寛いでくれたまえ」
小太郎先生は、みんなを後部座席に押し込むと、一人運転席に乗り込んだ。