百地外伝~夢と希望
東名高速から小田原へ抜け、車は海沿いの道をひたすら走った。
平日の朝ということもあり、途中大した渋滞もなく、車は熱海を目指して快適に走って行く。
「パパ、とっても順調!」
紫苑先輩がドライバーの小太郎先生に向かって、明るく労いの言葉をかける。
「紫苑、窓を開けてごらん」
小太郎先生の言葉に軽く頷いて、紫苑先輩が海側の窓を開けると、磯の香りとともに湿った空気が車の中いっぱいに広がった。
「あぁ、海の匂いだ」
ユタが目を細めて呟いた。
「夏って、感じだね」
身体に纏わりつく、この夏の感覚が、あたしの中の埋もれた記憶を呼び覚ました。