百地外伝~夢と希望
「あっ、荷物は大丈夫、自分達で運びますから」
翔の声にあたし達はすかさず荷物を手に取り歩き出した。
こんな歓迎まで受けて、その上荷物まで運んでもらったらバチがあたるよね。
でも、横を見ると、
「じゃ、佐藤、お願いね」
と、上品な笑みを湛えて荷物を預ける紫苑先輩の姿。
やっぱり、先輩は見かけだけじゃなく、本当のお嬢様らしい。
「田中、大丈夫か?」
夢の余韻と現実とのギャップに戸惑っていると、後ろから百地に頭とくしゃっと撫でられた。
再びこみ上げる苦しみ、胸をつく悲しみ……
どうしたのかな、あたし。
あれは夢の記憶の筈なのに。