百地外伝~夢と希望
「荷物、貸せ」
立ち止まるあたしの手から荷物がもぎ取られた。
百地は片手に自分の荷物とあたしの荷物を纏めて持つと、片方の手をあたしに差し出した。
「ほら、来いよ」
無造作に握られる手。
その手に包まれたとき、身体の緊張が一瞬にして解けた。
苦しみと悲しみの感情がすうっと吸い取られる感じ。
そんなあたしとは反対に、「うっ……」っと、百地の眉間に皺が寄った。
「お前……」
百地、もしかして、あんたが今、あたしの持て余した感情を吸い取ったの?
握られた手に力が込められる。
『俺がお前を守ってやるから……』
百地の囁いた言葉に、心が共振した。
『うん、ずっと待ってた……』
あたしは心の中でそっと返事を返した。
確信に近く、あたしの心の声が百地に伝わったと感じた。
「夢子、百地、早く来いよ! バーベキュー始めるってさ」
翔の明るい呼び声に、現実に引き戻され、二人して顔を見合わせて頷いた。