百地外伝~夢と希望
「僕もウニは大好物ですよ。是非、その技をご伝授願いたいな」
百地の言葉は単なる社交辞令を通り越し、真剣そのもの。
「光栄だわ、陸上部の次期エースに、素潜りを教えたって、学校で自慢できる」
「紫苑先輩、俺にも是非」
その隣に立った翔も、目をキラキラさせて紫苑先輩を見つめていた。
「じゃ、明日の朝から特訓よ」
「えっ、明日?」
「そう、この入り江は四時を過ぎると陽が陰って暗くなるの、ほら……」
紫苑先輩の指差す先には、崖の影に身を沈め始める太陽があった。
最後の輝きを放って崖肌に吸い込まれたその後には、黒い入り江の影が黒く、くっきりと浮かび上がる。
それはまるで、侵入者を許さぬ要塞のような存在感。
辺りは次第に光を失っていった。