百地外伝~夢と希望


何?

やっぱりユタって子供なの?


いくら怖いからって、か弱い乙女を一人置いて行くなんて……

あたしは大きなため息を一つつくと、階段に腰を下ろした。


暗闇は怖くない。


ここに居たら、入り江に帰って休む人魚に会えるだろうか……

あたしは、陽の陰った入り江を、一人ゆっくりと眺めていた。


ヒュゥルル……ヒュゥルル……


笛のような高い澄んだ音が、また聞こえた。


空耳じゃない。


確かにその音は聞こえていた。

そして、あたしは見た。

入り江の入り口から浮かんでは消える、黒い影を。



確かに見た。
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