百地外伝~夢と希望
「紫苑先輩、佐藤さんて、園部家の執事なんですか?」
なんだか今の時代にそぐわない佐藤さんの存在に、あたしはどうも違和感をぬぐえなかった。
「佐藤は、わたしの母が父に嫁いだ時、実家の桂木家から母と一緒に来たのよ。
だから、正確には佐藤はわたしの母の執事なの。
でも、母が亡くなった後も家族同様に一緒にいるの。
ホントはもう執事の仕事は放免なんだけど、父もわたしも何もできない役立たずでしょ。
必然的に家事全般と雑事は佐藤の担当になっちゃってるわけ」
「ふぅん」
なんだかわかったような、わからないような……
「さあ、素潜りの特訓開始よ。
先ずは、軽く準備運動ね」
「おう」
翔も百地も、シュノーケルを持ってやる気満々。
あたしの横では、ユタが眠たそうに大きく欠伸をした。