百地外伝~夢と希望


「ユタ、あんたは行かないの?」


すっかりくつろぎムードのユタは、あたしの隣りのリクライニングチェアに、自分のブルーの縞柄ビーチタオルを広げていた。


「僕、泳ぎは苦手なんです。

浮き輪持ってきたから、あとで一緒に浅瀬で水遊びしよう」


にっこりと笑うユタの顔がいやに可愛らしくて、何だかいつもと様子が違う。

って……、そうか、眼鏡かけてないんだ。


辛うじて若干の少年らしさを加えていた小道具がなくなると、ユタはすっかり小さな可愛い子供に見えた。

昨日、ざわめく風の音に恐れをなして、あたしを一人置き去りにしたことなんか、全く以って気にも留めてないところが、ユタらしいと言うか。

そんなナイトの役をユタに期待したあたしが馬鹿だったんだと思い知らされる。


ホントにこいつは何を考えているのか分からない。
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