百地外伝~夢と希望
「あたしはちょっと水に浸かってくるね」
「僕は寝させてもらうよ。夜遅くまで執筆してて、眠いんだ」
ユタなりに合宿を満喫しているらしい発言だ。
まぁ、憧れの小太郎先生が同じ屋根の下にいるとなれば張り切るのも当たり前か。
あたしは別に張り切るわけじゃないけれど、折角のビーチを目の前にして、あたしなりに今を満喫しようと、持参した真っ赤なスイカ柄の浮き輪を手に、水に向かって歩き出した。
金槌って訳じゃないけど、泳ぎには自信がない。
でも浮き輪があれば大丈夫。
あたしは浮き輪に掴まり、水の中をそっと覗いた。
プライベートビーチと言うだけあって、誰にもあらされていないこの浜は砂浜も水も凄く綺麗。
あたしの足の間を、小さな色とりどりの魚達が、人を恐れることなく泳いでいくのが良く見えた。
少し深くなるに連れ、砂の間から海草が生え出して、あたしの身体をくすぐるように撫でていく。
その光景に見とれ、夢見心地で、あたしは浮き輪を押しながらゆっくりと水図の中を進んでいった。