百地外伝~夢と希望
もう限界、苦しい、って思った時、誰かが後ろからあたしの身体を抱きかかえた。
あたしは首を後ろから掴まれたまま、水面へと向かって上っていった。
脱力したあたしの意識は、陽の光が水面でキラキラと輝くのを、ただ美しいとだけ感じて見つめていた。
泡になりたい……
そう思ったのは、そこがとても居心地が良かったから。
ザバッと身体が水面に浮かんだとたん、照りつける陽の光が眩し過ぎて。
動かない身体が、まるで石のように重く感じて。
あのまま、キラキラと光る水の中に留まっていた方が幸せだったんじゃない……、なんて……
「夢子、夢子、しっかりしろ」
ゲホッと水を吐き、代わりに生暖かい空気を吸い込んだあたしの耳に、あたしの名を呼ぶ百地の声が聞こえた。
「ももち……」
そっと目を開けたあたしの前に、険しい百地の顔があった。