百地外伝~夢と希望
「丁度水面に上がろうと上を見たところに、夢子が沈んでくる姿が見えたから」
百地はあたしの声が聞こえたことには一切触れず、小太郎先生が納得するよう話を作った。
「それはホントに幸運だった。
君が気づかなきゃ、僕が駆けつけたところで、あまりに時間がかかり過ぎていたよ」
「夢子は何かに集中すると、周りが見えなくなっちゃうんだ。
俺が一番良くわかった筈なのに……
目を離した俺がいけないんだ……
俺はそのためにここにいるんだから……」
「翔、それは違うよ。翔は翔。自分のことを最優先していいんだよ」
あたしは翔に向かって手を伸ばした。
「夢子はわかってない。それが俺の役目なんだ。生まれた時からの」
ハッと息を呑んだ翔は、無意識のうちに口にした言葉の意味を悟られまいと、慌てて言葉を繋いだ。