百地外伝~夢と希望
「それが、ナイト?
役割って……、そんなの勝手過ぎない?
翔の意思は無視?」
「俺の意思?
俺は夢子と一緒で楽しかった。ナイトの役も少しも嫌じゃなかったよ」
コンコン、と小さく遠慮がちに脱衣室のドアを叩く音がした。
「翔、夢子、大丈夫? あんまり長いから心配で」
紫苑先輩の不安そうな声がドア越しに聞こえた。
「すいません、髪、乾かすのに手間取って。もうすぐ行きますから」
「無理しないでね、ゆっくりでいいから」
そう言うと、紫苑先輩は食堂へ戻って行った。
「夢子、歩ける?」
「うん、シャワー浴びたら、少しすっきりした。
なんだかお腹も減ってきたみたい」
「そりゃいい、じゃ、姫様、どうぞお手を」
翔に差し出された手に、あたしは自分の手を重ねた。
「まぁ、もう暫く、ナイトの役は百地と半分こにしてもらわなきゃ。
何せ、長年の習慣を突然止めるっていうのは、気持ちの悪いもんだからさ」
翔が、悪戯っ子のように、片方の口角を上げて二マッと笑う。
それでもやっぱり、あたしには翔が美しく見えた。