百地外伝~夢と希望
「みなさん準備はいいですかぁ~
それじゃ、出発しまぁ~す!」
真っ赤なバンダナを木の枝に旗のようにくくり付け、紫苑先輩が先頭を切って歩き出した。
その後ろを小太郎先生、ユタ、翔、あたしを挟んで、百地が続いた。
昨日の入り江は、何にも遮られない太陽が、ジリジリと照りつけて、正に夏の暑さだったけど、今日の太陽は、生い茂る木の葉に遮られ、幾分弱気だ。
海の方から吹き上げる風に吹かれ、ジワリと滲む汗もあっという間に乾いてしまう。
あたしは、足元の一歩一歩を踏みしめながら、いつの間にか無我の境地に入り込んでいた。
ヒュゥルル……ザ、ピュゥ……
ガウゥルル……ザ、パァン……
突然、耳元で風の音が吹き荒れた。
先日耳にした風の音とは比べようもないくらい、激しい、耳をつんざく様な大きな響き。
驚いて振り向くと、そこにはあたしと同じように耳元を押さえる、百地の歪んだ顔があった。