百地外伝~夢と希望
昼食後、あたしと翔と紫苑先輩の三人は、佐藤さんの運転するバンで一足先に別荘へと引き上げることになった。
それもこれも、あたしが一人じゃ嫌だと我侭を言ったのと、紫苑先輩があたしも一緒に行くと言い張った結果。
紫苑先輩があたしを心配したのか、翔と少しでも一緒にいたいと願ったのかは、あたしには知る由も無い。
でも、あたしを気遣う紫苑先輩はいつもの様に明るく優しくて、大切にしたいと思ってしまう自分に気付く。
「ねぇ、夢子、翔、折角女三人になったことだし、一緒に温泉へ入りにいかない?」
車に乗るなり、紫苑先輩が嬉しそうに囁いた。
「それはいいお考えですね。タオルは備えつけがありますから、ご心配には及びません。
私はその間、買出しでもしておりますので、ごゆっくりなさって下さい」
運転席から、間髪いれずに声がした。
「じゃ、佐藤、あそこへお願い」
「かしこまりました」
あまりにスムーズなやり取りに、口を挟む間もなかった。
あたしと翔は、顔を見合わせ、まっいっか、というように目で頷いた。