百地外伝~夢と希望
「うわっ、すっげぇ……」
翔の呻きにも似た、感嘆の声が聞こえてきた。
そこは、海に向かって開かれた出口のようだった。
湯煙りの向こうには、青い空が一面に広がり、切り立った崖の下は海。
一歩足を踏み出せば、海に向かって飛び立てる。
息を吐くように規則正しく海から吹き上げる風によって、一瞬、湯煙りが飛ばされ、そこにくっきりと青空が現れるのだ。
が、見る見る立ち上る湯煙りに視界は直ぐに閉ざされてしまう。
その繰り返しに、いつしか雲の上を飛んでいるような錯覚に陥っていく。
「天国みたい……」
あたしは、思わず呟いた。
「あたしも同感。ここに来ると天に昇った気持ちになるの」
裸という開放感もあってか、何物にも囚われない、正しく生まれたままの素の自分に戻れる、そんな気がした。
「この下は断崖絶壁だから、誰も上ってなんか来れない。
だから、覗き見されるとか、そう言うことは心配しなくて大丈夫」
紫苑先輩の言葉に、更に心も緩んでいく。