百地外伝~夢と希望
真っ暗な闇の中、雲の切れ間から丸い月が顔を出した。
月明かりに照らされて、あたしは足元に蠢く群集を見つめている。
『この戦は、負け戦じゃ。だが、我々は大儀の為、戦わねばならない』
あたしは、黒装束に身を固めた大勢の男達を前に、焦燥感を募らせながらも戦いの祝詞を口にしようとしていた。
『全ての物は土に帰り、また土から生まれる。
我らは、今死すとも、必ずまた集う。
死を恐れるな。
死は終わりではない。
己の使命を全うすることが、来世に繋がる道となる』
静まりかえった、群衆に向かって、あたしは最後の出陣の言葉を発した。
『伊賀に栄光あれ! いざ! 散れ!』
闇に紛れるように、男達の姿が次々と消えていく。
あたしは、横に立つ、一人の男に目を向けた。