百地外伝~夢と希望


真っ暗な闇の中、雲の切れ間から丸い月が顔を出した。


月明かりに照らされて、あたしは足元に蠢く群集を見つめている。



『この戦は、負け戦じゃ。だが、我々は大儀の為、戦わねばならない』



あたしは、黒装束に身を固めた大勢の男達を前に、焦燥感を募らせながらも戦いの祝詞を口にしようとしていた。



『全ての物は土に帰り、また土から生まれる。

我らは、今死すとも、必ずまた集う。

死を恐れるな。

死は終わりではない。

己の使命を全うすることが、来世に繋がる道となる』



静まりかえった、群衆に向かって、あたしは最後の出陣の言葉を発した。



『伊賀に栄光あれ! いざ! 散れ!』



闇に紛れるように、男達の姿が次々と消えていく。

あたしは、横に立つ、一人の男に目を向けた。
< 181 / 328 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop