百地外伝~夢と希望
闇の中から、突然、赤く燃える炎が立ち上った。
『熱い、炎が、焼かれる……
心波、早く! 早く止めて!』
あたしは狂ったように、我を忘れてその男の足にすがり付いていた。
身体に残る炎の記憶に身を悶えさせながら……
『懍、目を覚ませ! 目を覚ますんだ!』
男は身を屈め、あたしの身体を強く抱きしめる。
でも、あたしの恐怖は冷めやらない。
どんなに、きつく抱きしめられても、この記憶から逃れることができない。
『熱い、炎が、焼かれる……』
目に映るのは、赤く燃えさかる炎と、焼け爛れる人、人、人……
泣き叫ぶ声、崩れ落ちる轟音、一瞬にして命を奪われた人々の無念が魂を揺さぶる……
『心波、助けて……』
あたしの口は、聞き覚えのある名を呼んだ。