百地外伝~夢と希望
「紫苑先輩、夢子が湯当たりしたみたいなんで、少し休ませてもらっていいですか?」
「あら、ま、たいへん。
昨日の今日だものね、ちょっと刺激が強すぎたかしら?」
涼しい顔でニコリと微笑んだ紫苑先輩は、躊躇なく湯から身を起こすと、出口へ向かって真っ直ぐに歩き出した。
翔に支えられ、ゆっくりと歩き出したあたしに、戻ってきた紫苑先輩がフワリとバスタオルを掛けてくれた。
「ちょっと、待って」
後ろを向いてしゃがみ込んだ紫苑先輩は、今度はタオルを水道の水で濡らしている。
水滴が滴るほどに緩く絞られた、冷たいタオルが顔に当てられた。
眠っていた身体が、悲鳴を上げて目を覚ます。
「湯当たりでしょ、冷まさなきゃね」
紫苑先輩の対処は正しい。
お陰であたしは正気を取り戻した。