百地外伝~夢と希望



熱海を発った二日後、あたし達は関西国際空港に降り立っていた。



熱海から戻ると直ぐ、あたしはママに、

「根来に行かなくてはならない」と、だけ告げた。

驚いたことに、反対すると思っていたママは、別段騒ぎ立てる素振りも見せず、

「そう……」

と、だけ言うと、後は出発の日まであたしと言葉を交わすことを避け、沈黙を守った。


出発の朝、目覚めると、ママがあたしの枕元に静かに座り、あたしをじっと見つめていることに気が付いた。


「根来に行くということは、全てを知るということを意味するの。

これはあなたが生まれる前から分かっていたことではあるけれど、あなたはあたしに背負えなかった荷を背負うことになる。

あなたは、一族を導く巫女となる。

あたしの小さな夢子は、手の届かない遠くへ行ってしまう……」


目に涙を溜めながらも、真っ直ぐにあたしを見てそう言ったママの目は、真剣だった。
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