百地外伝~夢と希望


「そんな……、大げさだよ……」

あたしは必死にその事実を否定しようとしたけれど。


「あなたは巫女となる」

「そんな……、まだ決まってないよ……」

「あなたはもう分かっている筈。

それに気付いたからこそ、根来へ行くのでしょう?」


確かに、これは定められた運命なのだ。

わたしは、その先の未来を見るために根来へ行く。


「ママ、あたしは、それでもやっぱり、ママの娘だよ」


あたしは恐る恐る、ママの顔を覗き込みながら、その柔らかな胸に飛び込んだ。

ママに抱き締められたのは何時のことだったろう。

遠い日の記憶をママの胸の中で探っていると、柔らかな手が恐る恐るあたしの背中に回わされ、一瞬、躊躇した後、強く抱き締められた。


「夢子、あたしの大切な宝物……」


見上げたママの目から涙がこぼれた。

パパが死んだ時でさえ、凛として涙を流さなかったママ。

ママの涙は、あたしの置かれた状況と、これからあたしを待ち受ける、とてつもなく大きな試練を示唆しているのだろうか。


抱き締められた安心感と、ママの涙を見た不安。


それは正に、あたしの置かれた立場そのもの。
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