百地外伝~夢と希望
飛行機を降りた後、次々と列車を乗り継ぎ、あたし達はその日の昼過ぎ、JR和歌山線船戸駅に降り立った。
「なんだ、結構都会じゃない?」
流石に大きなビルこそないが、駅前広場の向こうには、そこそこの田舎町が広がっていた。
「夢子、ここは根来へのほんの入り口。根来はあの山の奥だよ」
翔の指差す方向には、深い山々が連なっていた。
「じいちゃんが迎えに来てくれてる筈なんだけど……」
翔が広場をキョロキョロ見回している。
といっても、それほど広くないこの駅前広場に、見渡したってあたし達の他、人っ子一人見つかる筈も無い。
駅前広場で待つこと小一時間。
あたし達はコンビニで調達してきたおにぎり弁当を頬張りながら、じっと迎えの来るのを待っていた。
「ふわぁ……」
と、眠気を覚えて身体を伸ばし、ふと見上げた広場の入り口に、大きな影がそびえ立った。